スティールパンとは、20世紀に誕生した最も新しいアコースティック楽器。
ドラム缶から生まれた音楽と、マニッシュの活動について紹介します。

スティールパン(Steelpan/Steel Drum)は、20世紀に誕生した最も新しいアコースティック楽器のひとつで、1930年代にカリブ海の島国トリニダード・トバゴで生まれました。
植民地時代、アフリカ系住民が受け継いできた太鼓文化は制限を受け、従来の楽器を自由に使うことができなくなりました。その中で人々は、空き缶や鉄製容器など身近な素材を使って音を生み出す工夫を始めます。やがて石油産業で使われていたスチールドラム缶に注目し、表面を成形して音階を持たせることで、世界でも珍しい「メロディを奏でる打楽器」へと発展しました。

第二次世界大戦中、トリニダードには米軍基地が置かれ、多くの200リットルのオイルドラム缶が流入しました。これを素材に、表面をへこませるシンキング、音の配置、焼き入れ、チューニングなどの技術が確立され、現在のスティールパンの製法が形づくられていきます。廃材に新しい命を吹き込み、音楽へと再生するこの文化は、スティールパンの大きな特徴であり、今も世界中で受け継がれています。
1950年代以降、スティールパンはトリニダード・トバゴを代表する楽器として世界へ広がり、ジャズやクラシック、ポップスなど多様なジャンルで演奏されるようになりました。現在では同国の国民楽器とされ、教育や地域活動、国際交流の場でも活用されています。

このスティールパン文化と日本を結びつけてきたのが、マニッシュです。 1990年代、宮崎県に大型リゾート施設「シーガイア」が誕生しました。施設内の室内プールは「カリブの海」をイメージして設計され、その空間演出の一環として、本場トリニダード・トバゴからスティールパンバンドが招かれました。マニッシュはその来日メンバーの一人として日本に渡り、約1年間にわたり演奏活動を行いました。本場の演奏スタイルと文化を日本の観客に紹介し、多くの人にスティールパンの魅力を伝えてきました。

その後、日本に拠点を移して独立。演奏活動と並行して、スティールパンの製作・調律・改良にも本格的に取り組み始めます。日本国内で楽器を製作し、学校公演やワークショップ、イベントなど日本の環境に合った仕様へ調整することで、より多くの人が安全に、楽しく参加できる楽器づくりを行っています。

また、音の品質を保つため、毎年トリニダード・トバゴから専門チューナーを招聘し、本場の技術による定期チューニングを実施しています。音程や倍音のバランスを整えることで、常に高いクオリティの演奏環境を維持しています。本場の伝統技術と日本での制作活動を継続的につなげている点も、マニッシュの活動の大きな特徴です。

演奏にとどまらず、制作体験やワークショップを通して、音楽の楽しさとともに、ものづくりの面白さや国際文化への理解を育てています。 歴史あるスティールパン文化と、日本でのものづくり、演奏、教育活動を結びながら、マニッシュは今もスティールパンの可能性を広げ続けています。